上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 74αα線線放放出出核核種種製製造造技技術術開開発発とと新新規規放放射射性性医医薬薬品品開開発発 α線放出核種製造技術開発と新規放射性医薬品開発東東京京大大学学 アアイイソソトトーーププ総総合合セセンンタターー 東京大学 アイソトープ総合センター腸閉塞を惹起して摂食を障害し、患者の QOL を著しく低下させるにも関わらず、現在でも有効な治療法は確立されていない。そこで、我々は 2016 年に初めてヒトでのがん治療効果が実証された、α線放出核種を中心とする新規有用 放射性同位元素(Radioisotope:RI)を活用した治療法を開発し、従来のがん治療に新たな選択肢とすることを 目指して本研究提案を行った。 【【目目的的】】本研究提案では、加速器研究を生命科学と融合することによって、α線放出核種の大量製造による安定供給 技術開発と、α線医薬品の体内動態の解析と集積効率の改善による新規治療法開発を目的とする。 【【方方法法】】共同研究者の野村は、腹膜播種に対して、免疫学的メカニズムを含む新たな治療薬を開発するため、免疫 コンピテントな C57BL/6 マウスに移植し、腹膜播種形成可能なマウス胃癌細胞株(YTN 細胞株)を樹立した。 とりわけ、腹膜播種病変は腹膜表面に露出していため、飛程が 100μm と短いα線を放出して抗腫瘍細胞を発揮する α線放出核種を用いた放射性医薬品によって、治療が期待される病態である。 アスタチン-211 は輸入に頼らず国内の加速器施設で製造可能なα線放出核種であり、エネルギーが 6.0〜7.5 MeV と高いα線を放出して安定な 207Pb へと変化し、抗腫瘍効果を発揮する。加えて、半減期が 10 日以下の所謂短寿命α線放出核種であることから、医薬品としての優れた特性を有している。共同研究者の羽場は、従来から AVF(Azimuthally Varying Field)型サイクロトロンによるアスタチン-211 製造と国内供給の中核を担っていたが、まず動物実験、 ひいては臨床応用における需要に応えるため、At-211を効率的に製造する手法の開発を行った。 YTN 細胞株は FGFR4 を高発現していることから、抗 FGFR4 抗体を供給されたアスタチン-211 によって標識し、特異的に胃がん腹膜播種病変に届ける事によって、その治療効果を検討した。 At-211 標識 FGFR4 抗体による抗腫瘍効果を測定するため、C57BL/6 マウスに対し、YTN16 1.0×107個を腹腔内投与し、胃癌の腹膜播種モデルマウスを作製した。YTN16 投与 3 週間後に At-211(1.0 MBq)を腹腔内、静脈内及び胃内に、抗 FGFR4 抗体と結合させた At-211(1.0 MBq)を腹腔内、静脈内にそれぞれ投与した。その後 35 日まで 経過を観察した。 【【結結果果】】2020 年に建設された理研超伝導線形加速器では、従来の 5 倍強度の 4He ビームを利用し、臨床治験に必要なAt-211 の大量製造と高品質化が実現した。 FGFR4 抗体の標識により、単離収率は 30~40%、反応溶液の標識率は 40~50%程度であり、動物一匹あたり約 1.0 MBq を投与した。 全ての未治療マウスは 11 日目で死亡したが、At-211 標識抗体を静注または腹腔内投与した群では、未治療群に比べ有意な生存延長効果を認めた。特に At-211 標識抗体を腹腔内投与した群では、未治療群に比べ 9 日以上の長期生存を確認した。 【【考考察察】】胃がん腹膜播種病変に対して特異的にアスタチン-211 を届ける事によって、抗腫瘍効果を実現できることが 示された。一方抗原抗体反応には At-211 の半減期の 3 倍の 24 時間を要する為、At-211 を標的細胞により長く暴露 する必要性も明らかになった。今後一層効率的なドラッグデリバリーシステムの開発が必要と考えられた。 【【発発表表】】 1) Tatsumi T, Tanaka T, Sugiyama A, Jang J, Kobayashi M, Kumakura Y, Yin X, Haba H, Wada Y, Comparison of 211At recovery rates in glass vials and plastic tubes, RIKEN Accel.Prog.Rep. 57(2024), p167 2) Yoshino M, A. Sugiyama A, Tatsumi T, Nomura S, Shimazoe, Yamamoto S, Taguchi A, Tanaka T, Kobayashi M, and Wada Y. Observation of At-211 Accumulated Cells Using a Real-Time Alpha-Particle Imaging System. RIKEN Accel. Prog. Rep. Accepted. 74和和田田 洋洋一一郎郎 和田 洋一郎【【背背景景】】胃癌は我が国に多い癌の一つであり、診断された患者の 3 分の 1 は治癒できない。根治不能な胃癌の転移、 進展形式で最も頻度が高いのは腹膜播種であり、これがある場合余命は約一年となる。加えて、腹膜播種は腹水貯留や

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