上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 本研究における細胞のアポトーシス誘導のイメージ 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 73合合成成分分子子のの自自己己組組織織化化にによよるる細細胞胞ののアアポポトトーーシシスス誘誘導導 合成分子の自己組織化による細胞のアポトーシス誘導神神戸戸大大学学 大大学学院院工工学学研研究究科科 応応用用化化学学専専攻攻 化化学学工工学学講講座座 神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 化学工学講座近年、がん治療において化学療法は広く用いられているが、抗がん剤は正常細胞にも影響を及ぼし、副作用の問題が依然として克服されていない。この課題に対処するため、本研究では細胞死の一形態であるアポトーシスに着目し、 がん細胞を選択的に死滅させる新規化合物の開発を試みた。先行研究により、1541B(下図)と呼ばれる分子が自己 組織化し、プロカスパーゼ-3 を捕捉してカスパーゼ-3 へと活性化させることが報告されている。カスパーゼ-3 は アポトーシスの実行因子として知られ、この経路の活性化はがん細胞の死滅を促進すると考えられる。本研究では、1541B の作用機構を参考にしつつ、よりシンプルな構造を有し、効率的にアポトーシスを誘導する新規低分子化合物の開発を目指した。本研究では、1541B をヒントに新たに合成した低分子化合物 IPP-C14(下図)を用い、そのがん 細胞に対するアポトーシス誘導能および殺傷メカニズムの解明に取り組んだ。 IPP-C14 のアポトーシス誘導能を、ヒト肝がん細胞(HepG2 cells)を用いて評価した。HepG2 細胞を培養し、培地中に所定濃度の IPP-C14 を添加した後、1 時間のインキュベーションを行った。アポトーシス細胞の検出には FITC アネキシン V 染色を用い、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)およびフローサイトメトリーにより解析した。また、IPP-C14 と Fas 受容体の相互作用を調べるため、ローダミン標識 Fas 受容体(Fas-RITC)を用いた実験を行った。 これらの解析の結果、IPP-C14 は30μM 以上の濃度でHepG2 細胞のアポトーシスを誘導することが明らかとなった。さらに、IPP-C14 が Fas 受容体を介してアポトーシスを引き起こすかを検討した。IPP-C14 を単独で添加した場合、FITC アネキシン V 由来の緑色蛍光が細胞膜上に局在する様子が観察された。一方で、Fas 受容体阻害剤 Kp7-6 で 前処理した HepG2 細胞に IPP-C14 を加えた場合、緑色蛍光のシグナルは著しく減少した。フローサイトメトリー 解析の結果、Kp7-6 を添加しない条件ではアポトーシス細胞の割合が約 28%であったのに対し、阻害剤の存在下では約 8%に低下することが確認された。 次に IPP-C14 と Fas 受容体の相互作用を直接評価するため、Fas-RITC の挙動を観察した。その結果、Fas-RITC 単独では繊維状の凝集体が形成されるのに対し、IPP-C14 と混合すると、IPP-C14 の凝集体上に Fas-RITC が吸着 している様子が確認された。これらの結果は、IPP-C14 が Fas 受容体と直接相互作用することを示唆している。また、IPP-C14 添加によりカスパーゼ-8、10、3 が活性化することを見出した。さらに、IPP-C14 添加時に自己組織化阻害剤であるシクロデキストリンを添加するとアポトーシス誘導が抑制された。 本研究により、IPP-C14 の自己組織体が Fas 受容体を介してがん細胞のアポトーシスを誘導する新たな作用機構 (下図)を世界で初めて明らかにした。 【【発発表表】】 1) 2024 年 9 月 第 73 回高分子討論会、ポスター発表 丸丸山山 達達生生 丸山 達生73
元のページ ../index.html#101